文化を醸す

ワインを醸す

地域にこだわることが世界とつながる
テロワールという語の持つ意味 

土は遺伝子を持っている

ワインは、そのブドウが育った土壌の違いによってさまざまに変化します。例えば、都農ワインのシャルドネ・アンフィルタードは、いつも6番圃場から収穫したブドウから作られます。果実味の凝縮感とミネラルの香が特徴的です。シャルドネ・エステートは5番圃場から作られます。爽やかなリンゴ、ミントのような香りがします。その土地ならではの土の香りがするお酒、そういうワインでありたいと思います。ぶどうの収穫は年に1回というリズムでめぐっていきますが、ぶどうの加工もそのリズムの中で行われます。ワイン作りは農業の一部です。生産者の顔が見えないぶどうを使ったワインづくりなど考えられません。土は生きていますし、遺伝子を持っています。
土地の持つ香り、それをテロワールと呼んでいますが、テロワールは土の状況で変わっていきます。テ口ワールは、その土地の自然環境とそこに暮らす人たちが、何代にも渡って関わって、出来上ったものといえるのではないでしょうか。

ワインづくりは微生物との共戦

ワイン醸造はぶどう生産者とワイン醸造に携わる者の情熱に支えられています。都農にはその情熱があります。ここは、けしてぶどう栽培に恵まれた土地ではありませんでした。戦後、この地でひとりの先駆者によって始められたぶどう栽培は、苦労の連続であり、創意と工夫の積み重ねの歴史でした。栽培の適地と認められないため、補助金などの援助もないなかで、生産農家が自ら栽培技術を確立し、市場を開拓していったのです。こうした先達の情熱に心から敬意を表したいと思います。

高温多湿。表土の浅いやせた土地。それがぶどう栽培のハンディとなるか。それ故の個性あるぶどうが育まれることを、先駆者たちは証明しました。風土は人が克服するものではなく、人は風土に生かされていると考えるべきなのでしょう。人は風土と「協調」しあって、新しい何かを産み出すのだと思います。この風土が香るぶどうを使って、個性豊かなワインをつくりたいと、いつも試行錯誤しています。タンク発酵、樽発酵、乳酸発酵、醸し発酵・ワインづくりもまた微生物との「共戦」です。

ワインの丘をみんなの丘に

ワイン愛欽者の裾野を広げたいと、新製品のプランをいつも思い描いています。たとえば、シャンパンみたいなスパークリングワインがあったら、お祝いワインとしてもっと大勢の人に親しんでもらえるのではないかと、炭酸充填方式のスパークリングやビン内2次発酵のシャンパンを開発してきました。ここにはカフェがあり、ワインセラーがあります。そこでウエディングやパーティーを開くことができます。野外コンサートの楽しめるステージが完成しました。雑木林や森をめぐる遊歩道、お花畑。菜園の野菜で料理ができるキッチンガーデンもあります。ワインを核にして人が集い、親しく交流するなかから、新しい文化も生まれるのではないでしょうか。私たちが醸すのは、みんなが幸せ気分になれるみんなのワイン

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土を醸す

ぶどうは自然からの贈り物
自然との共生をテーマにした土づくり

私たちの畑は山の土の匂いがする

私たちの土づりの理想は、山の中の腐葉土にあります。森には毎年枯葉が積もり、虫や菌類をはじめとするさまざまな生物が関与して、豊かな土壌がつくられます。枯葉は土に返り、再び樹木に吸収されて森を潤します。ぶどう畑もそうした生態系の中に組み込まれた一部なのです。

森は自然の恵みを循環している

ワイナリーの東側には、クヌギの森があります。毎年春になると新緑を芽吹かせ、秋にはどんぐりが実り、次第に紅葉して落葉していきます。ここの地域は年間4,000㎜もの雨が降るところですが、クヌギは、毎年病気になることなく、健康に育っています。その健全な生育をしている理由は、土にありました。毎年降り積もった落ち葉を土の微生物が分解して土壌を作ります。そこには、農業者にとってお手本になるような団粒化された香り高い土、腐葉土があります。この腐葉土には、多くのミネラル分を含む養分があり、クヌギの樹は、ここから健全に育つための栄養を利用しています。
また、新たな樹が芽吹く時は、周りの大きな樹の影になるので、十分な光合成ができないまま、芽吹いても育つことができません。強風などで倒木して光が差し込むことで、はじめて新たな芽吹きがはじまります。森は、樹の本数までもバランスよく保っているのです。落ち葉が土をつくり、樹はその養分を利用して育ちます。まさに、森は自然の恵みを循環しているのです。

森の営みから学ぶ土作り

誰が手を入れたわけでもなく、整然と並ぶクヌギの樹。ここで人工的に樹を密植していって、どんぐりを沢山収穫しようとすると土の養分は多くの樹によって利用されて少なくなり、結果的に養分切れを起こし、病気になってしまいます。農業に例えると、化学肥料に依存したあり、農薬が手放せなくなってしまう状態です。
ブドウ栽培は、自然界ではありえない程の樹の数を植え付けます。土の養分を蓄えるためには、森の営みに合わせて落ち葉を入れようとすると、相当な量の落ち葉が必要になります。物理的に大量の落ち葉を広大なぶどう園に撒くのは難しいです。そこで、その落ち葉の変わりになるのが堆肥となります。
宮崎は畜産が盛んなので、牛や豚、鶏などの堆肥を使って、土作りをしている農家さんも沢山います。私たちもその農家さんに習って、堆肥を積極的に使った土作りをはじめました。堆肥を植物栄養と捉えるのではなく、土壌栄養、土壌微生物のエサと考える土作り農法です。土に堆肥を投入すると、微生物が堆肥を分解します。分解された堆肥が吸着剤の働きをして、土が団粒化して腐葉土のようなスーっとした香りがしてきます。植物が栄養として吸収するのは、肥料ではなくこの団粒に取り込まれている養分であり、土作りこそ農業の基本と考えるようになりました。

微生物と堆肥がミネラル成分を生み出す

私たちがぶどうを植えている牧内は、火山灰土壌で非常にやせた土地です。ぶどう栽培に適した土質と考えていました。しかし栽培に関する勉強会を重ねるうち、「やせた主地で育つ」という意味を取り違えていたことに気づきました。海外のぶどう畑は石灰岩がごろごろして、ぶどう以外の作物は育たないというイメージがあります。しかし重要なのは、ミネラル分自多い土様でありそこに世界銘醸地があるという事実です。

ぶどうの葉が紅葉して落葉した喜び

結果として健全なぶどう樹木が増えて農薬の散布量が5分の1になりました。特にべと病(カビ)の特効薬であるボルドー液は一度も散布せずにすみました。5月の開花期に雨が多いため、花粉にカビがついて結実しないということもなくなりました雨が降っていても指ではじくと濃い花粉がパッと散るほど樹木が丈夫になったのです。そして雨に負けないたくましい実をつけ、味も香りも凝縮感を高めています。
何よりも嬉しかったのは、ぶどうの葉が紅葉したことです。それまでは雨や台風で葉っぱがなくなっていました。それが土づくりをしてからは収穫後の畑に葉が残り、紅葉し、落葉する…これが植物本来の姿だと思いました。

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未来を醸す

安心で安全な食の生産のために
そして大地に根ざした文化

「みんなのワイン」という夢を共有して

都農町は1999年「潤いと活力のあるまちづくり」優良地方公共団体自治大臣表彰を受けました。地元産にこだわったワインの生産・販売により、産業の振興を図ったことが評価されたものです。しかし都農ワインが販売を開始したのは、そのわずかその3年前。96年11月、ロゼと赤ワイン3万本余りのリリースでスター卜したのでした。幸せなことに、この旅立ちは多くの皆様に祝福をもって迎えられ、限定販売にも関わらず瞬く問に売り切れました。続いて発売した白ワインは即日完売という状況で、たちまちにして「幻のワイン」の名をいただいたのです。これほどの結果を誰が予測し得たでしょうか。

「焼酎王国宮崎」にあって、ワイン用ぶどうの生産技術も販路開拓も、すべてゼ口からの出発でした。そこにはただひとつ、「みんなのワイン」という夢の共有だけがありました。九州でも有数のぶどう産地「都農」から、ワインづくりを通じて食と農への新しい提言ができたなら・・そんな思いが響きあい、ぶどう生産者、ワイン醸造家、消費者が一体になったワイナリーづくりが始まったのでした。10万5,000本体制に設備増設、国際スタンダード規格の採用、果実酒製造の永久免許取得、そしてワインセラー建設と20万本体制の確立。ワイナリーのオープンから17年でここまでたどり着いたのです。

安心で安全な食の生産のために

地域に根ざした地元で愛され続けるワイナリーを理想として、「都農ワイン」は設立されました。生産者と消費者の顔の見える関係を大切にしたワインづくりです。それは、おいしいだけでなく安心で、安全な食の生産をめざすことでもありました。良質の原料が良質のワインになるという視点で、安心で安全なぶどうの生産への取り組みにも、一層の力が注がれるようになりました。

山と海、大地との関わり方。それは文化にほかならない

生産性を重視し化学肥料に過度に依存した近代農業が、地球環療や人体に及ぼす影響は深刻です。私たちは農業が環境汚染の元凶になってはならないと考えてきました。そのために農業の基本である土づくりに取り組み、自然の生態系を重視した環境保全型の農業をめざしてきたのです。
こうした取り組みは、自然が本来の生態系を取り戻すための、小さな一歩かもしれません。しかし、そのささやかな積み重ねが、環境保全型の農業と循環型社会の実現に不可欠なのです。やがて健全な大地は、山と海にもつながり、私たちの暮らしを潤す源になります。緑に包まれた尾鈴山と、青くまぶしい日向灘。このかけがえのない自然環境に本来の生命の営みを取り戻し、次の世代に引き継ぐことは私たちの責務です。

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