『ワイン王国』に寄稿させていただきました。No,49~No,54
ワイン王国は、各国の生産者や、日本を代表するソムリエの協力の下、世界のワイン情報をはじめ ワイン&グルメスポット、 ワイン&グルメ&観光スポット 食とのコラボレーションなど 美味しくて役に立つ情報を 満載しています。
ワイン王国 2009年3月号
第1回目は、都農ワインの代表品種である、キャンベル・アーリー
について、掲載させていただきました。
食用ブドウの垣根を超える!
都農町は、宮崎県下で一番の生産量を誇る食用ブドウの生産地。温暖な気候を利用し、「尾鈴ブドウ」としてキャンベル・アーリーを栽培、出荷しています。ところが、このキャンベル・アーリーが盆を過ぎると価格が急落してしまうため、食用ブドウのキャンベル・アーリーに付加価値をつけて、ワインとして販売しよういう目的で、1996年に「都農ワイン」を設立。都農町、尾鈴農協、地元企業の出資のもと、第三セクター方式でスタートしました。
キャンベル・アーリー
都農ワイン設立のための試験醸造施設で、私は18歳の時から、ワイン用ブドウ栽培とワイン醸造の両方の担当となりました。冬の剪定、堆肥散布、ビニール掛け、枝誘引、袋掛け、収穫そして、仕込み…。農園長と2人で80aの面積を管理してきました。
そして、本格的なワイン醸造に取り組んだのは、都農ワインのオープン1996年と同時にはじまりました。都農ワイン工場長小畑暁と行った初めての仕込みは、キャンベル。大きなプレス機に5,000㎏ものブドウが、じっくり搾られていくのを見て、圧倒されました。なにせ、試験醸造では、50㎏のプレス(^^ゞ)でしたから。。。
5,000㎏のブドウが搾汁できる、プレスマシン。
キャンベル・アーリーは、果皮と果肉が硬く、ワインには不向きな品種と言われています。ワインにした場合、醸造過程で酸化が進み、フォクシー・フレーバー(狐臭)が発生してしまいます。そこで、キャンベル・アーリーのフレッシュな香りを表現するために取り入れたのが、ブドウ果汁の酸化を抑えた独自の醸造方法。それは、不活性ガス(窒素ガス)を利用した醸造方法。空気より重い不活性ガスをタンク内に注入することで、ブドウ果汁液面にガスの層を作ってくれ、空気との接触を避けることができ、酸化を防いでくれるのです。これは、酸化防止剤の軽減にもつながり、人体に害のある亜硫酸の使用も抑えられます。
そして、もう一つ重要なのは、サニテーション(衛生管理)です。収穫後のブドウを入れるコンテナには、大量の雑菌が付着します。この雑菌は、ワインの味わいに雑味を与えてしまうため、コンテナはもちろん、醸造設備の洗浄、殺菌を徹底しています。これらは、工場長小畑のコンセプトであり、徹底して、酸化をさせない、綺麗にすることに努めています。
イギリスで定評のあるワイン評価本。「ワイン・リポート2004」で「最も注目すべき100本のワイン」に都農ワインのキャンベル・アーリーが選ばれた。
食用ブドウとして栽培され、ワインには不向きと言われるキャンベル・アーリーと正面から向き合い、キャンベルの良さを表現していくこと―― それこそが、私たちの目指す、食用ブドウとワイン用ブドウという垣根を越えたワイン造なのです。
赤尾誠二