ワイン王国 2009年7月号
第3回目は、多彩な表現が可能なシャルドネ。
■多彩な表現が可能なシャルドネ
都農ワインでは、2001年より自社農園で栽培されたシャルドネから、3タイプのワインを販売しています。当時、国内のワイナリーでシャルドネを3種のシリーズに仕立てているのは稀少でした。地域の個性をワインとして表現でき、醸造家を魅了してきたシャルドネ。都農のシャルドネも、都農の個性を表現することに努めています。その年のブドウの個性を100%引き出すワイン作り。ひとつのスタイルに固執せず、多彩な個性を楽しめるよう、農場ごとの特性や収穫時期を見極め、それらを醸造スタイルにまで繋げ、醸すことが都農ワインのコンセプトです。
完熟期を迎えたシャルドネ。醸造方法を変え異なるタイプのシャルドネを造ります。
■農場ごとの個性をつかむ
シャルドネの農場は、8つの畑があり、およそ2ha。収穫量は、15t~20tになります。
私は、3月から9月まで毎日畑に通います。そう、雨の日も、風の日も、台風の日も!
冬の剪定時の枝の硬さや感触、萌芽、開花、ベレゾーン、熟成期にいたるまで、すべての農場の特性を把握して収穫のタイミングを決めていきます。
「アンウッディド」が作られるステンレスタンク。
フレッシュな味わいに仕上がります。
■それぞれのコンセプトでシャルドネを醸す
【シャルドネ アンウッディド】
~タンク発酵のフルーティースタイル ほのかな甘さも心地よい~
健全果実のみを収穫し、低圧でプレスします。その後、ステンレスタンクで低温発酵させ、果実味、フルーティーさを楽しめるよう醸造します。さらに、やや甘口のスタイルに仕上げ、親しみやすい味わいになっています。複雑味を持たせず、果実の個性そのものが試されるワインです。
発酵・熟成には、フレンチオークを使用。
樽の香りが風味豊かなワインを生む。
【シャルドネ エステート】
~樽発酵、樽熟成の正統派スタイル 酸味のバランスが心地よい~
黒ボクに粘土が少し混ざった2つの畑から、果実のフレーバーがピークのところで収穫をします。低圧でプレスした後、スガモロ社のフレンチオークで発酵させ、その後6ヶ月間の樽熟成を行います。その間、澱引きせずに旨みを引き出すシュール・リーを定期的に行い、味に厚みを持たせます。酸味のバランスが心地よく、果実味、樽香、そして複雑味が備わったワインです。
【シャルドネ アンフィルタード】
~樽発酵、乳酸発酵、樽熟成の本格派スタイル 上品で重厚感ある味わい~
8つの畑のうち、最良単一畑6耕区のみから、完熟した果実のみを収穫します。エステート同様、低圧でプレスした後、樽発酵、樽熟成させます。さらに、アルコール発酵後、乳酸菌によってワイン中のリンゴ酸を乳酸菌に変えるマロラクティック発酵を行います。樽熟成中は、シュール・リーも行い、重厚感を持たせます。そして、旨味を損なわないよう瓶詰。滑らかな舌触りと上品で重厚さを兼ね備えたワインです。
■樽はワインにとって大切な容器
材料のオークは産地によって香りが違い、樽だけでもワインの個性が表現できるといわれています。それだけに私たちも樽材の選定にこだわり、大切にメンテナンスしています。しかし、ワイン樽の寿命は短く、3~5年。ウイスキー樽が数十年なのに比べたら、とても贅沢な容器です。シュール・リーの撹拌をするたびに、作柄や醸造の特徴などが伝わってきてワクワク、ドキドキ。緊張感が高まる瞬間です。
このようにシャルドネはいろいろな技法で表現することができ、醸造家にとって興味の尽きないブドウです。都農ワインでは将来、シャルドネでスパークリングワインをつくりたいと夢を描いています。
赤尾誠二