ワイン王国 2009年9月号
第4回目は、日々のブドウの成長記録を通じて…
都農独自のブドウ栽培 定点観測編
【ブドウの定点観測】
私は、毎年ブドウの定点観測をしています。ブドウの萌芽がはじまる3月下旬から9月上旬の収穫まで、同じブドウの写真を毎日撮影します。そして、その日のブドウの表情や管理内容を記録して、エクセルのシートに貼り付けています。さらにその表上部には、月齢を書き、月のリズムによって、いつどのようにブドウの表情が変化しているのかも記録しています。一年間の記録をA3用紙に出力しつなげると、7mほどの長さになります。ちょっとした巻物です。
定点観測を出力したもの。およそ7m。日々、写真、コメントを書き込んでいます。
【月の満ち欠けを利用した農業】
今、月のリズムに沿って農業をしている方も増えていますが、月の満ち欠けは、日本の農業では古くから利用され、月齢という月の周期から、暦が作られてきました。月の引力で海水が満ちたり引いたりすることも、動物の習性にも影響があることも知られています。植物もまた同じで、月の引力(満ち欠け)によって、変化することも体系化され、暦を元に一粒万倍日などが決められ、作物によって、いつ種を蒔くのが良いかも伝えられてきました。
満開のブドウの花。新月、満月に向けて花が咲きます。
【ブドウも野菜も一緒】
私たちも6年ほど前から、独自の土作りをベースに、月の暦を利用しながら、ブドウの誘引や通路草刈、追肥などの肥培管理をしています。また、野菜の種蒔きや定植時期にも同様に利用しています。例えば、ブドウの開花時期を月齢に照らし合わせてみていると、満月か新月に向けて咲き始めます。
これは、野菜や自然の樹木も同じような動きで花が咲くことがあります。自然のリズムに沿って管理ができれば、健康で風味の良い作物が育ち、農薬の使用量も減ると考えているからです。これは、ブドウも野菜も同じです。私たちの農園では、月のリズムに沿った管理という理由だけではありませんが、農薬の使用量は、以前の1/5ほどに減っています。
腰くらいの高さまで草をのばしてから刈ります。
【毎年の蓄積が大事】
管理方針を決めるのに、曖昧な記憶をたどって管理を進めるより、明確な記録として残すことで、次年に向けた方針を客観的に決めることができます。この方法と肥培管理は、地元の有機農業研究会から学びました。さらに、地元農家の方からブドウの適時作業の重要性を学び、書き入れていくと、作業によってどのような違いが出るのかも把握できます。
年に一度の栽培ですので毎年の蓄積が大事です。農業技術はノウハウの宝庫。温故知新という言葉がありますが、先達の努力によって培われてきた技術をさらに高めながら、次の世代に継承していくことも私たちの使命だと考えております。
赤尾誠二