■都農ワインプロローグ
宮崎県の日向灘に面した中央部、延岡市と宮崎市のちょうど中間あたりに都農町は位置している。人口1万3千人足らず。主たる産業は農業。野菜やくだもの、畜産が盛んなところである。背後には九州山地に連なる尾鈴山がそびえ、夏には、五穀豊穣を祈り、都農神社の賑わいが増す。都農町は、九州のどこにでもある典型的な田舎町のひとつである。
この町に平成8年に都農ワインがオープンした。都農町は、戦後まもなくからぶどう栽培が始まり、今では宮崎県下で一番の生産量を誇るぶどうの生産地である。温暖な気候を利用して、特に北海道向けのキャンベル・アーリーの出荷が盛んである。ところが、このキャンベル・アーリーは盆が過ぎると価格が急落してしまう。そのキャンベル・アーリーに付加価値をつけてワインにしてしまおうというものだった。
そこで、私は、縁あって都農ワインの醸造に携わってきた。都農ワインは開業して、たかだか10年目であるが、Wine Report 2004に掲載されるまでの都農ワインの足跡を検証してみたい。